医師の仕事は診療ですが、診察室の外に出て、地域の保健事業に携わる機会も少なくありません。私は小児科医なので母子保健の仕事をしています。乳幼児健診や育児相談を通して、子育ての見守り役をしています。 |
その頃、成人病と言われていた心臓病、糖尿病や脳卒中は生活習慣病という概念に統一されました。しかも、病気の素地は小児期の生活習慣にあると考えられていましたので、委員会の主たるテーマは小児の生活習慣に決定しました。
委員会は生徒や保護者、先生方、地域の人々と学校歯科医、学校医で構成されています。1年に1度の開催、議題は毎年変わります。これまで、就寝時間等の生活リズムの乱れ、朝食欠食や好き嫌い等の食生活の問題、ゲームやTV鑑賞など遊びのこと、それに係わる運動不足の実態など、概ね身近な事から問題が提起され、その解決に向けて活発な討議がなされています。
子供の生活は、親の生活習慣に左右されます。共働き世帯の増加や生活の夜間へのシフトなど難しい問題が背景にあります。親子で考え、知恵をしぼりながら、改善策を考えて、少しずつ可能なことから実行しています。
学校に赴くと、患者だった子が皆たくましくなっています。今度は私が子供から元気をもらっています。
1月末に、健康について考える2つの会にでてきました。 |
詳しくみると、青年壮年期から肥満や血糖値の高値など糖尿病発病の素地がみられます。これに中年期の脂質代謝異常が加わって、動脈硬化をきたすことになります。すなわち、青年期、もっとさかのぼれば少年期の食習慣、生活習慣の問題が、将来の生活習慣病と係わると考えられます。
これらを踏まえ、上越市では、小児期から老年期までの各ライフステージを考慮した健康づくりを進めていくことになりました。
前後しますが、協議会の1週間前に、私が学校医をしている小学校で学校保健委員会が開催されました。これは小学生、保護者、保健の専門職、学校職員と学校医で構成され、生徒の健康について考えていく会です。テーマの豊富な会でしたが、ここでも肥満について話題になりました。これには、外遊びが少なくなって、テレビやゲームの時間が多くて運動不足になっていることや、食事やおやつの問題が関連しているのではないかという意見がでました。
こどもの生活は、大人の生活習慣の影響下にあります。例えば、かたよった食事や生活リズムの乱れなどは家族全体の健康に影をおとすかも知れません。
最後に、「親子一緒になって、生活のスタイルや食事について考えていこう」、「休日ぐらいは親子一緒に運動や外遊びをしよう」という前向きな提案がなされました。
1つは市の大人だけの会議、もう1つは学校での子ども達との話し合いでしたが、共通点があったと考えます。「病気になってからでは、大変です」、「こどもの時からのしっかりとした生活習慣が病気の予防につながります」、「親の生活や食習慣が子に影響します」の3点にまとめられるのではないでしょうか。
日本では、一般的に、小児科受診年齢は中学生までとなっておりますが、これは単にこれまでの習慣にすぎません。欧米をはじめとして近隣の東南アジア諸国でも「成人するまでは小児科」となってきてます。 |
タバコをすっている人の発ガンについては、ご存知でしょう。でもタバコをすっている親のこどもにも害が及んでいることをごぞんじですか?親のタバコの煙が知らず知らず、こどもに悪影響を及ぼしてます。喘息や鼻炎、気管支炎をおこしやすくなります。また、タバコのニコチン成分はこどもの計算能力、読解力もおとすと言われてます。喫煙はこどもの脳にも影響します。 |
また、こどもの誤飲の事故で多いのはタバコです。タバコ1/2本を食べると命にかかわることがあります。タバコのやけども少なくありません。勘違いしているかたが多いのですが、換気扇のしたで吸ってれば大丈夫と思っていると大変です。煙は一瞬のうちに家中に拡大します。家族を危険に巻き込むことになります。ご注意を。
平成30年12月に、成育基本法が成立しました。この法律は、すべての妊婦・子どもに妊娠期から成人期までの切れ目のない支援体制を保障すること、子どもの健全な育成は、国や市町村のみならず、関係機関にも責務があることを明記しています。子どもとその保護者の支援のための、教育、医療、福祉分野の連携が不可欠であると述べております。 |
具体的には、将来を担う子どもたちの健やかな成長を社会全体で支援することが少子化対策を強化するものであり、本法の制定はその大きな一歩であるとし、今後も医師会は関係機関と連携し、実効性のある施策を講ずる考えを示しました。
なお、今後は、上越医師会においても、現在の子どもとその保護者が抱える様々な問題に向き合っていく必要性があるものと考えております。育児不安、虐待、子どもの貧困、発達障害、乳幼児の健康管理等々、数え切れないほどの課題があげられます。これらの問題解決には、医師のみでは対処できないことは明白です。各種の行政機関、保育の場、教育の場、NPO法人などと連携し、医師会として、何ができるか模索すべき時期がきたと考えております。小児保健部の力量では、できることに限りがあります。成育医療に精通された方またこれらに関心のある方のご協力に期待したいと思っております。